ピラーホイール方式
確実なスタート・ストップ操作
ストップウオッチのスタート・ストップのコントロールには「ピラーホイール方式」が採用されました。プッシュボタンを押すときの指の力が動作に影響を与え難く、クラッチやレバー類に無駄なトルクがからないためです。
ピラーホイールの発信・停止のメカニズム
① STARTボタンを押すと、作動レバー先端でピラーホイールが右方向に回されます。
② ピラーホイールが回転することで、柱に乗っていた発停レバー先端が柱の間に落ち、閉じていた2つの発停レバーが開きます。
③ 2つの発停レバーで離されていたクラッチリングが4番車とつながります。(バネ力でクラッチリングに4番車が押し付けられます)
④ クロノグラフ秒針は、スプリングドライブの通常運針と同期して、正確に動き出します。
垂直クラッチ方式・計測開始時の針飛びがない伝達方式
機械式クロノグラフは、時刻表示用の歯車から、動力伝達機構(クラッチ)によって、動力と精度をわけてもらっています。そのため必然的にその精度も、時刻を表示させている部分の精度と同じになります。クロノグラフの機構にも、スプリングドライブの高精度を犠牲にしないものが絶対に必要でした。
辿り着いたのは、計測開始時の針飛びがない「垂直クラッチ方式」でした。
「垂直クラッチ方式」はスタートボタンが押されると発進・停止レバーが開き、クラッチばねの反発力によってクラッチリングと四番車が連結してクロノグラフ計測が始まります。
水平クラッチで発生しやすい、計測スタート時のストップウオッチ針のぶれがなく、より正確な計測が可能なのです。
この動力伝達方式は1969年、自動巻クロノグラフ用としてはセイコーが世界で初めて採用したものです。 加えてクラッチばねの材質や形状を変更することで、さらなる精度追求が行われました。
READY/STARTモード
正確さと押し心地へのこだわり
時刻表示精度と同じクロノグラフ精度が実現できても、操作時にその精度が損なわれては意味がありません。プッシュボタンを押したときの計測誤差を最小限にとどめ、計測精度をより高める必要がありました。
そこで誤操作の少ないスタート・ストップが可能な「READY/STARTモード」が採用されました。
「READY/STARTモード」とは、プッシュボタンを押すと軽く下に押し込まれてREADYモードになり、そこからさらにカチッと押し込むことでSTARTする方式です。カメラのシャッターの半押しと同じ操作方式で、一気に押し込むよりも誤操作の少ないスタートが可能なのです。
また、操作時のクリック感にも徹底的にこだわりました。押し心地を多数の時計で比較し、研究を重ねた結果、重すぎず軽すぎない、心地良いクリック感を実現しました。
ねじロック式・ボタン構造
誤動作を防ぐ
クロノグラフのプッシュボタンには、ねじロック式ボタン構造が採用されています。
スクリュー式のカバーを回転させることで、その内側のパイプが下がり、スタートボタンを押すことができるこの特殊な構造は、誤作動を防ぎ、より正確な計測を行うために新たに開発されたものです。
9Rスプリングドライブとは
ぜんまいを動力源としてローターを回転させ、その運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、そのわずかな発電で水晶振動子を駆動する。
機械式時計とクオーツ式時計のメカニズムを融合した、グランドセイコー第三の心臓、9Rスプリングドライブムーブメント。
世界の時計師たちが夢見ながら決して実現できなかった世界で唯一のイノベーションがここにある。